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日本国憲法の砦(「合憲性判断における二重の基準」 編)

  • 行政書士 森 政敏
  • 2016年3月12日
  • 読了時間: 4分

狭山市の相続なら森法務行政書士事務所|合憲性判断における二重の基準

 今日は、前回のように憲法の論点をご説明差し上げます。その論点の中でも、理解しずらいものや重要な論点を、「日本国憲法の砦」として考えていきたいと思います。

 今回は、表題にもあるように、「合憲性判断における二重の基準」です。この論点は、日本国憲法第22条を語るうえで登場する論点です。

 日本国憲法第22条では、職業選択の自由が定められており、特徴的なのが「公共の福祉」という文言が条文中で用いられている点です。

 「公共の福祉」については、前回の「日本国憲法の砦(「公共の福祉」編)」で触れておりますので、「公共の福祉って何?」という方は、どうぞご一読下さい。

 さて、本題に入ってまいりますが、職業選択の自由は、人権の自由権の分類のうち「経済的自由権」に分類されます。これに対するのが、「精神的自由権」です。

 それでは、「精神的自由」と「経済的自由」とでは、いずれがより大切な権利でしょうか。

 答えは、「精神的自由」の方がより大切なものです。その理由は、この権利が侵害されたとしても、その侵害は目に見えず、顕在化しにくいこと等から回復することが困難である点にあります。

 日本国憲法で定められている通り、「職業選択の自由」については、その自由が保障されているわけですが、この自由は無限に認められるものではありません。

 「公共の福祉」や「権利の濫用禁止の法理」などにより一定の制限が加えられます。これが、例えば、許可制度や認可制度といったものになります。

 行政法上の概念としての「許可」とは、初めから国家によって禁止されている制限を、一定の条件の下で解くというものです。

 「認可」とは、ある一定の行為自体では不完全な法律行為であるものに、国家が幇助することによって、完全な行為とする概念です。

 そして、「精神的自由」に対する合憲性の審査基準と「経済的自由」に対する合憲性の審査基準は使い分けられます。

 それが「二重の基準」と呼ばれるもので、その中身は「厳格な基準」と「緩やかな基準」の二つになります。

 「精神的自由」に対する法律の合憲性の判断においては、その裁判所の審査基準は「厳格な基準」となり、規制目的に高度の正当性があり、さらに規制の手段が必要最小限で他に代替手段がなく、少しの欠点もないか否かで考えられる。

「職業選択の自由」は、自由権のうち「経済的自由」に該当し、この「経済的自由」を規制する法律の審査においては、「精神的自由」を規制する法律の合憲性を判断する上で用いられる「厳格な基準」は用いられないものの、その規制が消極目的規制である場合には、「厳格な合理性の基準」によって合憲性を判断することになる。

 上記のように、「精神的自由」を規制する法律の合憲性の判断においては、「厳格な基準」を用い、「経済的自由」を規制する法律の合憲性の判断においては、「緩やかな基準」が用いられることになるが、その「経済的自由」を規制する法律の立法目的が、国民の生命身体を守るためという警察的な「消極目的規制」の場合には、「厳格な合理性の基準」が用いられ、立法目的が、経済政策的な「積極目的規制」である場合には、「合理性の基準」が用いられることになる。

 こうして審査基準は、その権利の内容と規制の目的によって使い分けられ、「厳格な基準」と「緩やかな基準」があり、さらに、そこに「経済的自由のうち消極目的規制」である場合には、「厳格な合理性の基準」が存在することになる。

 つまり、これまでは、「二重の基準」であったが、「厳格な合理性の基準」が中間に登場することにより、「三重の基準」のトリプルスタンダードとなったのである。

 「職業選択の自由」は、「経済的自由」であり、適用される合憲性の審査基準は、「緩やかな基準」となるが、その「緩やかな基準」で審査する場合にも、その「職業選択の自由」への規制目的が「消極的目的規制」である場合には、その目的を達成するために必要最小限である必要がある。これが「厳格な合理性の基準」である。

 「職業選択の自由」への規制目的が「積極目的規制」である場合には、その内容が著しく不合理でなければよいとする。これを「合理性の基準」と考える。

 「合理性の基準」が用いられる場合には、裁判所は国会の立法裁量を肯定することとなり、法律の立法事実について審査をする必要はない。この基準は「明白性の原則」により、その規制立法自体が著しく明白に不合理な場合のみ違憲であると考える。

 以上が、職業選択の自由にまつわる合憲性判断の「二重の基準」絡みの論点である。

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