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日本国憲法の砦 (「公共の福祉」 編)

  • 行政書士 森 政敏
  • 2016年3月10日
  • 読了時間: 3分

「狭山で相続の森法務行政書士事務所」の憲法コラム 0

 今回は、「日本国憲法の砦」シリーズの第一編です。「日本国憲法の砦」といっても、パッとしませんが、以下のようなことです。

 日本国憲法を学ぶ者にとって、憲法の判例やら学説が沢山あって、少し嫌になるという方もいらっしゃるかと思います。多分、みなさんも一度はご経験なさっているかと思います。

 そんな、憲法の比較的わかりにくかったり、覚えにくかったりする、学習者にとっては、「壁」となる論点を「砦」として、「日本国憲法の砦」と題した次第です。

 その、第一編が、「公共の福祉」です。「公共の福祉」は、憲法第12条、13条、22条、29条の条文中に登場する概念です。

 まずは、通説の「公共の福祉」の解釈の仕方というか、「公共の福祉」とはどんなものなのかを、かなりわかりやすく説明します。

 つまり、「公共の福祉」とは、「人権と人権が衝突した際の緩衝材」です。「人は法の下の平等で、それぞれが平等に権利を有していて、人権は人が生まれながらに持つ当然の権利」だということはみなさんご理解いただけると思いますが、「自分の人権を主張するときに、それが行き過ぎると、他人の人権を侵害してしまいます。つまり、人権の価値はどちらも同じだから、衝突しちゃったときには、お互いに優しい心で、譲り合おうね。」というものです。

 では、折角ですので、少し難しい話ですが、「公共の福祉」の学説について考えてみましょう。

「公共の福祉」の学説には主に3つあります。その学説の3つは以下通りです。

1. 一元的内在制約説

2. 二元的内在外在制約説

3. 一元的外在制約説

 以上の3つです。言葉は少し難しいイメージを持たれるかもしれませんが、先入観を持たずに読んで下さい。

 まず、日本国憲法中で「公共の福祉」の文言を用いているのは、たった4つの条文のみです。既にご紹介しましたが、再度付記します。

・第12条

・第13条

・第22条

・第29条

 以上の4つのみです。ちなみに、第12条と第13条は、自由権のうち、「精神的自由」でしたね。そして、第22条と第29条は、自由権のうち「経済的自由」でしたね。

 一元的内在制約説とは、「公共の福祉」は全ての条文に内在的に含まれるものであって、成文化されているのは、特段の意味を持たず、どんな権利や自由にも内在的制約のみに服するとします。この説に対しては、「公共の福祉」の文言が憲法に規定されている意味を無視し、没却させるものであると非難される。

 内在外在二元的制約説は、精神的自由権を定める憲法第12条と第13条の中の「公共の福祉」を訓示的な規定であると捉え、22条と29条の経済的自由権の中にある「公共の福祉」の文言を特に明文で定めたもので、明文で制約を、上記22条と29条と同様定めるのであれば、公共の福祉を理由に制約できると考えるが、22条及び29条以外の権利の制約を認めないわけではなく、これらの権利は内在制約に服すると解釈する。

 そして、一元的外在制約説は、憲法で保障している権利及び自由は、公共の福祉に反する場合には法律で制約されうるとし、22条と29条の「公共の福祉」は、22条及び29条が「経済的自由権」を定めたものであるから、特に公共の福祉による制約を重ねて規制したものと考えられている。

 以上が「公共の福祉」学説の主だった主張ですが、皆さんは理解できましたか。抽象的で今一捉えにくいのが、この「公共の福祉」学説なのです。憲法に馴染んでいく中で自然とわかるようになるので安心してください。とりあえず、この三つの学説は覚えておいてもよい学説です。

 上記の知識に肉付けをしていって、学説に対する反論、再反論、再々というようにしていくと、磨きがかかってきます。

 それでは、また。

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