憲法改正要件と自民党案の軟性憲法化への挑戦
- 行政書士 森 政敏
- 2016年4月9日
- 読了時間: 3分
みなさんこんばんは。久しぶりの更新です。今回のテーマは憲法改正要件と自民党草案についてです。
さて、みなさんは、日本国憲法の性質をご存知でしょうか。日本国憲法は、欽定憲法ではなく、民定憲法であり、軟性憲法ではなく硬性憲法です。
欽定憲法というのは、「天皇(王)が、人権を国民に与える形で、主体的に作られた憲法」のことで、民定憲法は、「国民が主体となって、所謂天賦人権論的にあらかじめ存在する人権をもとに作られた憲法」を指します。
そして、軟性憲法は、「憲法改正のための要件が他の法律同様に、比較的簡単な要件で改正できる憲法」です。硬性憲法は、「他の法律よりも改正のための要件が厳しく定められている憲法」を指します。
さて、ここで例によって、日本国憲法の改正要件についての条文を参照します。以下日本国憲法の引用です。
憲法第96条
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
以上引用でした。
このように、憲法を改正するためには、「総議員=すべての国会議員」の三分の二以上の賛成が必要で、かなり厳しいです。そのうえ国民投票が必要です。
これに対して、自由民主党の改正案は、以下の通りです。
第100条
① この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院がそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
② 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を交付する。
以上が、自民党の憲法改正案中の、改正要件についての条文です。
以上からも分かる通り、憲法の改正が、もし、この自民党案によるのであれば、容易にできるようになります。
憲法の性質も、硬性憲法から軟性憲法へと変わることになるので大変な改正案であるといえます。
私は、憲法を軟性化することに関しては、反対ですが、賛成する方の意見も一理あると思います。
ただ、「ダイヤモンドはダイヤモンドで、その辺の石ではないから希少性が高く、貴く扱われるのです。」
実は、私は、憲法についての本を過去に書きまして、その中で「膨張する人権」の危険性について述べました。
「人権を好きなだけ憲法に盛り込めるなら、その価値は下がり、ほかの法律で定められた権利同様に扱われかねない。」という危惧があるわけです。
憲法を改正する余地は当然あり、考えなくてはなりませんが、憲法の性質とその内容は精査する必要があるのも当然のことです。
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