士業と委任契約と代理権(「代理権の性質等」)
- 行政書士 森 政敏
- 2016年5月30日
- 読了時間: 5分
みなさま、大変ご無沙汰しておりました。この特集記事の更新も、業務が輻輳していたために遅れがちでした。
今日は、埼玉県狭山市ではポツポツ雨が降っていましたが、気温は過ごしやすかったように感じます。
月曜日ですから、皆さんの中には、まだ体が「仕事モード」でない方もいらっしゃるかもしれませんね。私もそうですから、明日からはシャッキとしなくてはなりません。
さて、私は、行政書士として仕事をしておりますが、行政書士のように、名前の中に「士」が入る職業を「士業(しぎょう)」と読んだりします。
主に、法律に関係する職業を行う方は士業の方が多いかと思います。「宅地建物取引主任者」、所謂「宅建」も、現在では名称を変えて、「宅地建物取引士」となりました。
法律関係の知識を商品としている者にと「法律行為を代理してもらいたい」と気に結ぶ契約が「委任契約」です。
「委任契約」は、「諾成」「双務」「無償」「無方式」の性質を持つ契約類型の一つです。以下、上記用語について付記します。
「諾成」とは、「意思表示と意思表示の合致(意思の合致)があれば契約が成立する」ということを示します。
「双務」とは、「片方の当事者のみが義務(債務)を負うのではなく、双方が義務(債務)を負う」ということです。
「無償」とは、「委任契約の受任者側が負う債務を履行しても、これに対して報酬を支払う必要がないこと」を指します。
「無償式」とは、「契約書の調印などの手続きがなくとも、意思の合致のみで契約が有効なものとなる」ということです。
以上です。
「委任契約」は、通常無償契約であると法律では定められておりますが、弁護士や行政書士などの専門職に委任した場合には、特段の定めをしなくとも、報酬が発生するというのが判例及び実務、通説の立場です。
また、「無方式主義」については、実務的には必ず、委任契約の内部関係を証明するために「委任状」という形で、契約を結びます。
委任状がないと、対外的関係において、真の代理人であることが証明できず、業務が遂行できなくなってしまうのです。
それでは、代理権についてですが、代理権については、法定代理と任意代理とが存在し、両者については、以下をご参照ください。
「法定代理」の場合には、授権行為という、代理における本人が代理人を定めて権限を付与する行為なくてして、法律で定める事由が発生すると当然に代理権が発生します。
例えば、子供が生まれれば、親子間に法定代理関係が発生します。また、不在者財産管理人も法定代理人になりえます。
「任意代理」の場合には、授権行為という、本人から代理人となりうる人に代理権を授ける行為を行わなくては、代理権は発生しません。
それでは、代理権について、簡単におさらいをしたいと思います。以下の通りです。
1.代理権の目的
代理制度そのものの問題ですが、法定代理の場合と、任意代理の場合とでは代理権の目的が異なってきますので、区別する必要があります。
まず、両者に共通する事項として、行為能力の拡張に意味があるといわれています。
人は、法人でない、自然人は、体が一つしかありません。当然ですね。このことから、仕事で忙しいけど、問題が発生して解決する必要がある場合や不十分な行為能力しか有しないもの(制限行為能力者)は、代理人を選任又は代理人が付与されることで、行為能力を拡張させられる点に利点があります。
「法定代理」の場合には、その行為能力の不十分な部分を補うことで、自己が行う以上の法律的効果を自己に帰属させることができます。
「任意代理」の場合には、行為能力は十分にあるが、より広く、権利を行使したいと考えている場合に、受任者に代理権を付与することで、行為能力を拡張させることができます。
2. 代理権の効果帰属主体
代理において、代理人が法律で定めた通りに代理権を行使した場合には、その代理人のした行為の効果は、代理人に帰属するのではなく、代理権を授けた本人に帰属することになります。但し、法律通りに、「顕名」をしなかった場合、つまり、代理人が本人のためにすることを第三者に示すことなく、第三者がこれを知らずに取引をした場合には、その法律行為の効果は代理人に帰属することになります。
3. 代理行為の瑕疵
代理行為について、意思表示の瑕疵についての判断については、本人が特段指示した場合を除いては、代理人の行為(意思表示)を持って判断されます。例えば、本人が選任した代理人が、第三者甲さんと、高価な骨董品Xの売買契約の締結をした際に、第三者甲さんが、さらに高価な骨董品Yを代理人を騙して高価な骨董品Xを売りつけようとした場合に、「誰を基準に騙されたか」を判断する基準は代理人をもってすることになります。
4. 顕名
代理人の行為が本人に帰属するためには、自己が代理人として本人のために法律行為をする意思を表示しなければならないというのが「顕名」と呼ばれるものです。顕名を欠いてなされた法律行為の効果帰属主体は代理人となり、本人には帰属しないのが原則で、例外として、相手方が当該事実について悪意(知っていた)場合には、本人に効果が及びます。
*表見代理などについては、後日記事としますので次の論点に移ります。
「士業」と呼ばれる人に仕事を依頼する際に行われる委任契約と代理の関係はどのように考えられるでしょうか。
民法においては、少なくとも民法の起草者においては、任意代理権の発生場面は、常に委任であると考えていたが、実際には、その通りではありません。
なお、民法の起草者が任意代理権の発生=委任契約の締結であると考えていたといえるのは、民法条文中の「委任による代理」と表現している点からも明らかになります。
代理の制度は、代理人の行為によって、本人に効果帰属をせしめようとするもので、対外的な効果帰属主体に関する制度で、これとは別に、代理人と本人との関係については、代理人と本人との内部関係である委任契約等によって、その法律行為の行方を指し示すことになりますが、この第三者との対外的関係とではなく、代理人と本人との内部的関係を生じせしめるものの一つが委任契約である。
つまり、代理は内部関係である委任契約等とは独立した存在で、その内部関係は委任であるとは限らないのです。
今回は、表見代理を除いて代理制度についてご説明申し上げましたが、近いうちに表見代理についても記載したいと思います。
読んでくださって誠にありがとうございます。
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