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「守りの」民事保全法と「攻めの」民事執行法の関係性

  • 行政書士 森 政敏
  • 2016年3月11日
  • 読了時間: 5分

A「貸した金は?」、B「何も財産無いからご自由に」

 上記の画像は、別に「貸した金は返せよ」に、「いや、財産なんて何もないから、裁判でも何でもご自由に」と言っている写真ではありませんよ。

 著作権フリーの素材で、ビジネスマンたちの画像ですよ。でも、多分、この著作権フリーの前提はWixサイト内のみにての話なので、みなさんは転用しないようにして下さいね。

 さて、くだらない話は置いておいて、今日は、法の中でも、「民事保全法と民事執行法」について、基礎的な話をしたいと思います。

 まず、法分類として、「一般法と特別法」で分類するなら両者はどちらに分類されますか?

 答えは、「どちらにもなりうる」が最も正確な答えです。皆さんお気づきですか?上記の質問は大切な要素を書いた没問です。

 なぜなら、法分類するときに、「一般法と特別法」に分類するときは、必ず、「どの法との関係で」と聞かなくてはなりません。

 理由は簡単。「一般法と特別法」の分類方法は絶対的な分類方法ではないからで、「相対的」な分類方法だからです。

 民事保全法は民法との関係では、特別法であるし、民事保全法施行規則からいえば、一般法にあたりますね。

 民事執行法も同様です。

 それでは、「実体法と手続法」で分類する場合はどうでしょうか。

 民事保全法も民事執行法も、権利のメニューとも呼ばれる、民法が実体法であるのに対して、どちらの法律も、手続法にあたります。

 今回は、民事保全法がどんな法律なのか、民事執行法がどんな法律なのかの表面を簡単にご説明申し上げるものとします。

 民事保全法は、簡単に言うと、「将来強制執行するにあたっての、自己の地位を仮に定めて、万が一の際には、一般債権者に優位して自己の債権を回収できるようにするための法律」です。

 つまり、「保険」のような法律が民事保全法です。何かが起こった際には、強制執行しやすいように、地位を保全するのです。

 これに対して、何かが起こってから利用される法律が民事執行法で、強制執行は民事執行法に基づいて行われます。

 金銭消費貸借契約を例にとって、お金を貸してから実際に返してもらうまでの流れをご説明します。なお、このケースでは、民事保全法を利用しなかった場合を想定します。また、支払督促によらない強制執行を想定してます。

 まずは、契約を結びます。金銭消費貸借契約は、要物契約と言って、口約束で、「貸します、借ります。」では契約が成立しない契約で、借主に対して、その目的物を渡して初めて契約が成立します。

 そして、3か月後に返すはずのお金が戻ってきません。それも、500万円もの大金です。

 貸主は、これは大変だと、早く返すように支払いを求めますが、借主は「もう財産なんて何もないから、金は返せない」といいました。

 これに怒った貸主は、裁判手続きで、強制的に自己の債権を回収する方法をとったのです。つまり、裁判をしたわけです。

 裁判は順調に進み、無事に貸主は、全金額について自己の主張が認められる形になりました。

 貸主は、裁判が終わって、無事に債務名義を勝ち得たのです。ちなみに、債務名義というのは、強制執行をするために、実際にその債務があることを確認するもので、確定判決正本や仮執行宣言を付した判決書などのことで、民事執行法上にこの定めがあります。

 その債務名義に執行分を付与してもらい、いざ、強制執行として、今回は債権執行を選択し、お金を取り立てる手続きが始まりました。

 債権執行の規定は民事執行法にありますが、相手方の有する債権を目的としてするものです。一般的には、預貯金債権や給与債権を差し押さえて回収します。

 裁判所での手続きは終了し、借主の預貯金債権の口座も特定でき、あとは、その差し押さえた預貯金債権を回収するだけだと安心していた貸主ですが、ゆうちょ銀行や各銀行から送られてきた手紙を見て愕然とします。

 どの口座にも数十円程度しかお金が入っていなかったのです。しかも、実は、借主は、この貸主の他の人からもお金を借りていて、その借主甲は、民事保全に基づいて、保全手続きをとっていたので、民事保全法の順位保全効により、劣後し、これらの債権から貸主がお金を返してもらえる見込みは極端になくなりました。

 貸主は、給与債権にも期待していましたが、その給与債権も差し押さえ可能金額にも制限があるので、やむなく貸主はお金を回収することができずに途方に暮れるのでした。

 このように、契約は、万全をとるのであれば、契約締結、同時に物的担保である、抵当権等を設定し、それを登記をしておくか、民事保全法に基づいて、自己の順位保全をしておくのが得策です。

 最後に、先ほどからちょくちょく出てくる、順位保全効と関連用語について説明します。

 順位保全効を語るうえで、前提として、民法の原則である、債権者平等の原則を知っておく必要があります。

 債権者平等の原則というのは、特定の債務者に対して、複数の債権者がいる場合には、それらすべての債権者は平等なのだから、とりたても平等に取り立てるわけですね。

 そこに例外を定めたのが、民事保全法です。仮差押えや仮処分をすることで、あらかじめ、未確定ではありますが、将来の手続きで、確定する地位を得ることができるようになるのです。

 そして、この未確定の地位を保全する民事保全法の手続きで得られる効果は、「順位保全効」しかないのです。民事保全法がもたらす効果が順位保全効ですよ。

 あだ、民事執行法について書きたいのですが、今回はこのへんで。

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