日本国憲法の形から読み解く理想
- 行政書士 森 政敏
- 2016年2月26日
- 読了時間: 3分
「日本国憲法の形から読み解く理想」と題して記事を書きます。
「形から読み解く理想?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、憲法とは、「理想」を描くのが憲法です。
「今後、その国家がこうなってくれたら良いな」という思いを込めて作られています。「法律」もそうですが、一般に「法」というのは、理想を語るものです。
政策の作り方は、「現実を把握し、理想とのギャップを埋める作業」の繰り返しです。「現実を把握」するために、「統計」をとって、「現実」を捉え、「法律を作って理想」を示します。
それを執行していくのが行政です。
さて、本題についてですが、日本国憲法は、補則も含めてたった103条しかありません。
その中に国家の在り方が詰め込まれています。前文は多少長いものですが、前文にも、「法規範性」が認められており、前文も含めての憲法ですので、103条よりはちょっと多くなりますが、法としては、非常に短いです。
みなさん、学校を習ったのをおぼえていらっしゃるでしょうか。日本国憲法の基本原則は3つありますが、いかがでしょうか。
「国民主権」「基本的人権の尊重」「戦争放棄」ですね。これらの、3つは憲法条文中にも記載がありますが、前文にも記されています。
それでは、早速、日本国憲法の「形」「成り立ち」を見ていきましょう。
日本国憲法には、まず前文があります。これは、他の国家の憲法と比較しても珍しいものではありません。
そして、憲法本文に入ると、第一条で「国民主権」「象徴天皇制」が定められています。
初めの条文で、「主権者」について述べる憲法は他国の憲法と比較して、特徴的であるといえます。これは、日本が過去に侵した戦争の反省から、「主権者」が国民であり、一人の国家作用の総覧者として、「天皇」は、政治的権能はもはやもたないんだということを強調しています。
その後、憲法は、「2条から8条」にかけて、「天皇」について記述しています。これも、大変珍しい憲法で、他国の憲法には、なかなか見られない構成です。
その後、人権条項の前に、第9条がおかれ、「戦争放棄」がうたわれています。他国の憲法であれば、人権条項を先に持ってきそうですが、そうではなく、あえて「戦争放棄」の条文を置いているのは特筆すべき点です。
10条から40条で、人権条項があり、人権について書かれており、大日本帝国憲法の人権条項に多く用いられた「法律による留保」や「安寧秩序」という言葉は、ほぼなくなっています。
「安寧秩序」の代わりに登場したのが、「公共の福祉」という概念です。これは、憲法第12条、13条、22条、29条で用いられており、この概念をどのようにとらえるのかについて、学説が多数ありますが、簡単に言えば、「公共の福祉」は「権利と権利の衝突時における調整機構」であるといえます。「みんな同じ人権を持っている中で、それぞれの人権が衝突したときに、折り合いをつけるための概念」ということです。
そして、人権条項の後に、国会、内閣、司法、について、統治機関の条項が述べられており、人権がいかに重たいかがよくわかるつくりになっています。
途中まで見てきましたが、ここまで見ただけでも、以下の事項がわかります。
1. 国民主権に重きが置かれている。
2. 戦争放棄に重きが置かれている。
3. 人権重視
4. 象徴天皇制
などが読み解けます。このように憲法は、理想を語り、国家の今後を定めているというお話でした。最後のほう端折っちゃってすみません。財政も地方自治も、最高法規制も、改憲も大切なのはよくわかっておりますが、ちょっと用事がありますので、失礼いたします。
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